人生真ん中あたり

長い人生、今がちょうど真ん中あたり。

ある奴隷少女におこった出来事

先日読んだ本です。



1820年代のアメリカ、ノースカロライナ州。
自分が奴隷とは知らず、幸せな幼年時代を送った美しい少女ハリエットは、優しい女主人の死去により、ある医師の奴隷となる。
35歳年上のドクターに性的興味を抱かれ苦悩する少女は、とうとう前代未聞のある策略を思いつく。衝撃的すぎて歴史が封印した実在の少女の記録。
150年の時を経て発見され、世界的ベストセラーになったノンフィクション。


この本は、本屋をぶらぶらしていた時に、偶然見つけました。


最近は、ネットで本を買う事が多いので、このように「偶然」読みたい本に出会う事が、あまりありません。


本屋の平積みコーナーに置かれていて、おそらく夏休みの課題図書の1つだったのかな・・・?そんな扱いのようでした。


最初に思ったのは、なぜこれまで私の読書アンテナに、この本が全くひっかからずに来たのか、って事。
この手の本は、10~20代頃の私でしたら、けして見落とす事はなかったと思います。


実はこの本。出版当初はフィクションと思われていたんですね。
その為、出版されたアメリカでも、細々としか売られていなかったようなのです。


120年以上の月日が流れ、あるきっかけで、この本は実際の出来事をベースとしたノンフィクションだという事がわかり、アメリカで多くの人に読まれるようになったとのこと。


日本語訳されたのも近年で、日本の本屋に並ぶようになったのもごく最近の事なのではないかなあ・・・。
私も、本屋で手に取らなければ、もしかしてずっと気付かずにいた本だったかもしれません。


奴隷制度について、私は漠然とした知識しかありませんが、この本を読んで、実際の所どうだったのか?の片鱗を、そこかしこに知る事ができました。


奴隷は財産、という考え方。


奴隷所有者が、奴隷を金銭に変えたり、奴隷を相続(死んだ後、相続人に引き継がせる)したりする事は漠然と知っていましたが、奴隷から生まれた子供が自動的に母親(奴隷)と同じ身分になる、というのは知らなかった。


たとえ父親が白人で、身分ある男性だったとしても、奴隷との間に生まれた子供は奴隷のままで、一切の権利は生じない・・・という。


主人公の女性は、生まれながらの奴隷(代々奴隷家族)の1人なのですが、子供時代の途中までは、自分が奴隷だという事を知らずに育ちました。


最初の主人(祖母の代からの主人)は「白人にしては」良い主人だったらしいのですが、死ぬ際にも、けしてこの奴隷家族を解放する事はせず、親戚に相続させるのです。


他にも、「白人にしては」良い人、というのが多少なりとも出てくるのですが、実際に売ればお金になる財産として奴隷を所有する人は、どんなに良い人でも、けして彼らを手放さない。


人間の、一番難しいところは、ここなんじゃないかなあ・・と思いました。


私は現代の人間なので、この非人間的な制度を「ふざけんな」という目で見る事ができますが、実際その時代を生き、その時代の法律にのっとって生活していたとしたら・・・


果たして自分の中の良心は、正しく機能してくれるでしょうか?


そもそも、奴隷を所有し、力で屈服させる事を、法律が決めているのです。
人間が平等ではない、というのが法の世界で、自分は自分のものさしで、物事を見る事ができるのか・・・


自分がこの時代、奴隷を所有する白人の立場だったとして・・・自分の立場や持っているものを失ってでも、「人として」正しい選択をする事ができるのか。


そんな事を、深く考えさせられました。


良本です。
課題図書ナルホドです。(でも子供には、ちょっと重い本かも)


こういう事を、長きにわたってやってきたのだとしたら、人種間の対立云々は、簡単には語れないよなあ・・。

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