人生真ん中あたり

長い人生、今がちょうど真ん中あたり。

昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか

大塚ひかりの古典エッセイです。



以前1度読んだのですが、どうも頭に入りきらなくて、もう1度読んでみました。


七十過ぎても“婚活"!
姥捨て山に捨てられても、みごと生還!
極楽往生したくて、井戸にダイブ!
……昔の老人はやばかった!!


『舌切り雀』『浦島太郎』『源氏物語』…などの
昔話や古典文学に描かれた「老人像」を追い、
「昔の老人の知られざる生態」に迫るユニークな本!
              Amazonより


我々は通常、現在の日本人の事は良く知っていますが、昔の事は意外と知らない・・いや、歴史が好きな人は、小説など読むと思いますが、名もなき庶民が主人公になっている事はほとんどありませんからねえ。


その時代の「普通の」老人がどんな生活で、どんな扱いを受けていたのか、って、意外と知らなかったりするものです。


ざっくりいうと、前近代の老人は、意外と冷遇されていたとのこと^^;


これは・・まあ、仕方のない事でしょうね。


老人や子供、病人など、「弱き立場」にいる人達に対して、公平に扱える社会であるためには、社会全体に、余裕がある必要があります。


また、親や目上の人を大切にすべし、という思想が、日本に根付くまでは、結構な時間がかかっていたと思います。


前近代の日本は、食糧事情もそこまで良かった訳でもなく、庶民も余裕ある暮らしをしていた訳でもなく・・自然と、弱きもの(子供、老人、病人)への当たりは強くなっていたことでしょう。


数年に1度は飢饉や疫病が流行って、頑健な大人でも生き残るのが厳しい前近代、たとえ家族でも、弱きものを助ける余裕もなかったと思います。


いや、おそらく、今の我々の暮らしもまた、未来の日本人から見ると「ずいぶん公平さに欠けた社会なのねえ」と言われる事間違いなしですが。。


それでも、「人はすべからく平等に扱うべし」と多くの人が思っているし、憲法にも書かれている。現実にはできていなくても、法で定められていることは、大きいのです。


話がそれちゃった。


昔の老人は、思ったよりも長生きだったようです。


平均寿命が短いのは、乳幼児死亡率が数値を押し下げているからで、その時期を過ぎると、意外と70~80代まで生きるのも珍しくなかった・・と。


そうすると、年金制度のない庶民の暮らしは、ホントに死ぬまで働くしかない訳でして。


捨て子や姥捨ても当たり前だった昔は、たとえ肉親でも、情だけに頼って生きるのは難しかったでしょう。


昔話の中で、独居老人(または老夫婦のみ)が何かで一発逆転、お金持ちになったり、子を授かったりするのは、現実でもそのような立場にいる人々のロマンというか、夢だったんでしょうねえ。


昔話の中で出て来る主人公は、概ね当時の普通の人達を反映しており、その物語の終わり方に、彼らの夢や希望が託されていた・・・・と著者は言っております。


ちなみに・・


庶民・特に女性にとって、生きやすかったらしいのは、やはり平安時代か江戸時代・・と言った所でしょうか。


平安時代、貴族文化は栄え、庶民は苦労していたと思いきや、意外と平和な時代が続いて女性の地位も低くなく(文学の中では)、また江戸時代は、庶民の文化が栄えた時代。やはり長い歴史の中では、比較的マシだった様子。


当時の暮らしは、古い書物や文学、記録の中から推測するしかなく、また、著者によって"どこをピックアップするか"で見方がだいぶ変わるかもしれませんが、この著者の視点は、個人的には面白かった^^


この人の、他の本も読んでみたいなあ・・・と思える1冊でした。

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