人生真ん中あたり

長い人生、今がちょうど真ん中あたり。

「コレクター」 ジョン・ファウルズ

10代の頃に1度読んだきり、数十年間本棚にあった「コレクター」を、もう1度読みました。


あらすじ(Amazon)
網で捕った蝶を殺し、虫ピンで止めて飾って眺めるのを生き甲斐にしていた孤独な青年が、ある日それを美しい女に試みようと思い立ち娘を誘拐する……
一面、警察の調書のように非個性的でありながら、表現力豊かな文体で描かれたサスペンス小説の傑作。
わが国でも公開された米映画の原作。

今年に入ってから本棚の整理をしているのですが、「手放す前にもう1度読んでみよう」と思っている本が何冊かあり、これもその1つ。


読んだ時、妙に印象に残った本でした。だからこそ、読みもしないのに30年くらい本棚にしまっていた訳でして。


でも、当時はそんなに深く理解していた訳でもなく・・・


異常心理、という普通ではないものに、引きつけられていただけだったかもしれません。


今になってもう1度読んでみると、少し視点が変わっているのに気が付きました。


昔は、加害者である男性の心理ばかりに注目していましたが、被害女性の心理も、以前よりもずっと入り込む事ができる。


捉えられた蝶が、カゴの中でバタバタ暴れて、必死で状況から逃げ出そうとしているように、彼女の心の動きが、すごく身近に感じられます。


小説の前半は、加害青年にスポットをあて、一人称も彼自身。


後半は、被害女性の日記、という形の、彼女の一人語りが続く訳ですが


この後半部分の、どんどんとクライマックスに向けて追い詰められていく様子が、すごく上手い。


加害者の青年は、「美しい」という理由のみで、被害女性を誘拐・監禁するのだけど、彼女と心の面でも交流したいかというと・・・そんな事には、一切興味がなく


反面、誘拐された彼女の方は、何とか脱出するために、加害青年そのものを理解しよう、と、心に訴えかける事もするのだけど、全く無駄な事で


この辺の「人間、誰しも共通言語を持っている訳ではない」というのも、リアリティある部分なのかもしれません。
種類の違う人間というのは、いるものです。


異常な心理・・・この手の犯罪者は、割とどの国にもいると思うので、そういう心理を良く表しているかもしれません。


犯罪を犯しても、彼には彼なりの理屈や正論があり、圧倒的な力と状況で相手をねじふせている割には、自分の中でそれが「可」となっている。


怖いね。
普段の人間関係でも、ザラにある心理だと思いますので・・・


小説としてはすごく面白いですよ。おすすめです。


ただ、気持ちは明るくならないので、どよーん・・としたい人限定^^;

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