停電の夜に
ジュンパ ラヒリの停電の夜にを読みました。
とても良かった。
なんだか、フランス映画を数編見たような気がします。
著者は、インド系アメリカ人。
両親はカルカッタ出身のベンガル人で、ラヒリ自身はロンドンで生まれ、その後アメリカで成長する・・・という、国際色豊かな経歴の持ち主です。
その為か、小説は、9編の短編集から成っているのですが、どの話にも「インド」が織り交ぜてあります。
表題作の「停電の夜に」は、毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦の話が描かれているのですが・・
夫婦というモノが、本当に理解し合わない人間関係の上に成り立っている・・・というのを良く表しています。
情景はあくまでも静かで日常的で、それでいて深い心のうちを、チラ見せしてくれる・・・
うーん。上手い。さすがピュリッツァー賞をとっただけある。
表題作以外にも、アメリカに住む、インド系移民が良く出てきます。
生まれた国を離れ、別の国に自分の人生を築き上げていく移民というのは、望郷や不安、希望や野心などの、複雑な気持ちを持つ人々なのかもしれません。
文化や言葉や習慣の違う国で、人生を築き上げて行くため、懸命にそこでの足場を固めて行こうとしている。
でも、遠くにある故郷にも、常に思いを馳せている・・・
色々な気持ちや感情が何層にも折り重なっていて、人って・・・複雑なんだなあ・・・。
・・・というのを、淡々とした文章で伝えてきます。
一番好きな話は、最後の「三度目で最後の大陸」です。
インドを出て、イギリスで学び、アメリカで働いて生きて行く男性の話です。
1人称で描かれた文章は、ドラマチックな内容を語る訳ではなく、ただ移民としてアメリカ市民になって行く男性の視点を書いたものなのですが
これがね~・・なんだかとっても心に染みました。
内容は難しいものではありませんが、結構集中力がいるので、電車の中などで、片手間には読めないかも。
じっくり腰を据えて読めるだけの時間と、何杯かのコーヒーが必要でした。
ちなみに・・・
著者はべらぼうに美人↓